抗生物質などの薬が効かない「薬剤耐性菌」が世界的な問題となっている。国内でも感染拡大に伴う被害や死亡例が増加。抗生物質の使い過ぎが一因とされることから、政府は4月、2020年までに使用量3割減を目指す初の行動計画を策定しており、愛媛県内の医療機関も対策に乗り出している。
 「抗生物質を使う以上、耐性菌の出現は避けられない。終わらない闘いのようなもの」。松山大薬学部感染症学研究室の玉井栄治准教授は、耐性菌発生の仕組みを説明する。
 1928年にペニシリンが発見されて以降、抗生物質は感染症対策の有効な「武器」となった。耐性菌は自然界にごく少数存在するが、抗生物質を使うことでライバルとなる菌が死んで一気に増えて広がっていく。「新しい薬ができれば耐性のある菌が生き残り、どんどん強力になっていく」。遺伝子の突然変異などで複数の抗生物質に耐性のある菌も出現し、国内でも「悪夢の耐性菌」と呼ばれるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌などの拡大が懸念されている。
 特に病院での対策は重要だ。免疫力が低下し抗生物質を使っている人が多い院内は、耐性菌の発生や感染が起きやすい。愛媛大医学部付属病院感染制御部の田内久道部長は「体内に耐性菌があれば治療薬が限られる。最悪死に至るケースもある」と危険性を語る。
 同病院は抗生物質の使用量や偏りがないかを継続的に調査し、耐性菌の拡大防止に取り組む。「抗生物質の使用減は必要だが、必要な患者に投与しないわけにはいかない。まずは無駄な薬を減らすことが大切」と指摘。抗生物質が効かないウイルス性の風邪などに安易に処方するケースもあり、啓発が不可欠という。
 患者側にも注意が必要だ。松山大薬学部医薬情報解析学研究室の柴田和彦教授は「処方された分をきっちり飲み切ること。自分の判断でやめたり減らしたりしてはいけない」と強調。中途半端な服薬は耐性菌のさらなる出現を促すためで、「抗生物質は効く」というイメージに偏らず、耐性菌が拡大する現状への理解を呼び掛ける。